早とちり



スキップに近いような足取りで、廊下を歩く。

「何?なんか楽しそうね、
「分かる?」
「顔にも出てるし、足取りにも出てるわよ」

隣を歩く友達に言われてそうかなぁと笑って返す。 私が上機嫌な理由は簡単。明日はジョージとフレッドと約束した、ホグズミード行きの日。 学校じゃ、普段は制服ばかり着ているし、二人とも私の私服姿が好きだっていってくれるから、ホグズミード行きは私の大好きなことのひとつだった。

「ほら、明日ってホグズミード行きでしょ?」
「ああ、なるほど」

友達はもうずいぶん長い付き合いだから、この一言で全部分かる。 双子の両方と付き合うなんて、強者だ、なんて尊敬のまなざしを大多数の人から送られることがよくある私だけど、それが出来てるのはこの友人のおかげでもあったり。

「気をつけなさいよ?この前はジョージの話ばっかり聞いてフレッドほったらかしにしてたらしいじゃない」
「違うよ、逆逆。フレッドの話を聞いてたの」
「・・・あんた以外見分けつかないから」

そう、この前のホグズミード行きのときはフレッドが面白い話ばかりしていたから、ジョージは一人寂しくバタービールを七杯も飲む始末で、大変だった。
明日は気をつけよう、と思いながらさっさと談話室へと向かうのだった。






「あれ・・・?フレッドとジョージ?」

女子寮に荷物を置いて、談話室で二人と話そうかなあと思いながら階段を下りていたときだった。下を見ると、なにやら双子が・・・上級生の女子と話をしている。 何を話しているのかは分からないけど、二人とも、否さ、三人とも楽しそうだ。なんとなく下りていけないので、階段からじっと下の様子を眺める。話にけりがついたのか話をしていて上級生は「じゃあ」と手を振っている。よし、なんでもなかったのね。と思っており抵抗とした瞬間に、目撃したのは。

「・・・・あんの女・・・・っ」

別れ際に、双子の両方に軽くキスをしていった。というか、それだけじゃない。こっちをみてくすっと笑った。おまけといわんばかりに双子を抱きしめてから去っていく。ネクタイのカラーからするに、レイブンクローだ。 確信犯め、と思いながら階段を下りていく。双子はすぐに私に気がつくはず・・・いつもなら。今はぽやーっとしてさっきの女が去っていくのを見送っていて、私に気がついていない。

「・・・・・」

無言で顔を引きつらせつつも、落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせる。が。

「はー・・・やったな、ジョージ」
「ああ、サイコーだな」

聞こえてきた声に、堪忍袋の緒が切れた。 何か一言いってやろうと思い双子に寄っていこうとした・・・のだけれど。

先輩!」

「わ・・っと・・・何?」

見ると、一つ下の学年の後輩の女の子だった。結構かわいらしい子なので、私も大好きな後輩だ。その子が、がしっと私の腕を握り言った。

「あの、明日のホグズミードに一緒に行ってくれませんか!?私、明日初めていけるんです!」
「あの、ごめんね、明日は・・・」

明日は双子と約束してるから、と言おうと思って思いとどまる。待てよ。双子はさっき渡しそっちのけで楽しそうにしてなかったか?今現在も私に気付いてもいないし。

「だめですか・・?」
「ううん。いいよ!一緒に行こうね!」

私はにっこりと笑いながらそしてさりげなく双子に怒りをこめて返事をしたのだった。






翌日。
双子が出てくるのは毎度毎度遅いので、早めの時間にさっさと後輩とともにホグズミードに向かう。後輩の子は私が案内するところ、全部喜んでくれた。 どこかで双子に遭遇するかと思っていたけど、一回も姿をみることはなかった。

「・・・まさか、まだ待ってるとかいうことは・・・ないよね」
「どうかしたんですか?先輩」

私の呟きを聞き取って、後輩の子が見上げてくる。なんだかあの二人なら私を待っていそうな気がしないでもない。

「・・・ごめん、私ちょっと気分悪くなったから、先に戻るね!」
「え、っちょ先輩!!!」

後ろから呼び止められたけど、私はもう駆け出していた。





!!」
「どこ行ってたんだよ・・・僕たち待ってたのに」

玄関ホールに帰ってみると、案の定、二人が待っていた。

「ごめん・・・その、後輩と一緒に行ってた・・」
息をきらせつつ、そう言うと、双子は「ええ!?」と言う顔をした。

「なんで!?僕らと約束してたじゃないか」
「一ヶ月も前からだよ?それに、どうせなら僕らと一緒にその子も行けば・・」

二人が怒って言うけれど、私はむ、と言う顔をする。

「だって、二人とも私のことに気付いてなかったじゃない」
「「え」」

何のことか分からないらしい二人に、さらに私はむっとする。さっきまで少し謝罪したかった気持ちが、どこかへ行ったみたいに。

「何の話だよ?僕らがに気付かないわけ・・」
「うそつきっ!昨日談話室に私もいたのに!!」
「そうなの?」
「ほら、気付いてないじゃない!」

びしっと人差し指を向けていうと、双子が固まる。

「私に気付かずに上級生の女に鼻の下のばしてたくせに・・・!」

ふん!と身を翻して、寮に向かって走る。すると、二人も当然、追いかけてきた。

「追いかけてこないでよ!」
「待って!、誤解だって・・・!!」

だだだっと寮まで競争のように走り、談話室のじゅうたんに引っかかり、見事に私は転んだ。 もともと運動は得意じゃないので、追いつかれて当然。

、大丈夫?」
「・・・もう、何なのよ・・・」

絨毯にうつぶせになったままぼそっと言う。心配そうにしてるけど。

「私のことなんかほったらかしで楽しそうにしてたし・・・」
「だから、誤解だって」
「キスされてたし・・・」
「あれは、向こうが勝手に・・」
「やったな、とかサイコーとか言ってたし」
「〜〜〜〜〜〜〜っだから・・」

私がぶつぶつ言うと、両側から交互に返事が返ってくる。言い訳なんかしたってだめ。と思いながら黙っていると、手のひらに、そっと何かが乗せられた。

「?」
「今日、付き合うようになって丁度一年だろ」
「プレゼントだよ」

乗せられたものを見ると、それは綺麗な指輪だった。ぱっと見ただけで、高級そうだと分かる。

「これ・・・」
「マグルのツーハン?て言うんだっけ。それで見つけて人目で気に入ったんだけどさ。 ほら、僕らマグルのやり方なんてわかんないから」
「それで、ウッドの知り合いの彼女にお願いしたんだよ。昨日はそれ受け取ってたの」

二人の言葉に、私は嬉しいながらも、自分が恥ずかしくなった。つまり、私のは早とちりってことだし、一年なんてすっかり忘れてたし。がばっとじゅうたんから起き上がって、二人に向かっていった。

「ごめんね、二人とも・・・」
「いいさ、分かってくれればね♪」
「そうそう、ほら指輪つけてあげるから」

ひょいっと私の手をとると、左手の薬指にその指輪をはめてくれた。きらりと光る宝石は、ダイヤモンドだろうか。

「ありがとう!嬉しいっ!」

笑ってそう言うと、両側から二人がぎゅっと抱きしめてくれた。やっぱり、私はこの二人が両方とも大好きだ。と、ふと気が付いて小さめな声で言う。

「・・・あのさ、私なんにも用意してないんだけど・・・」
「「ああ、それならご心配なく♪」」
「?」

疑問符を浮かべていると、そっと二人が耳元に囁いた。


「「お返しは、の身体でしてもらうからねv」」
「・・・・・・・・・・っ///」



そのあと、顔を真っ赤に染めたがお返しに応じたかどうかは、別の話。




END




すっかり遅くなってしまいましたが、柚莉香サマへの相互夢ですっ!
双子お相手って初めてだったんで、いかがでしょうか・・・?
こんなものでも、気に入っていただけたら幸いです!
柚莉香サマのみ、お持ち帰りオーケーです♪

黎紅院 松籟